Penetration / Destination



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10.12 Infinite cave


月見得る秋宵と為れば、酔客としては其れを見て一杯と考えるのは自然な流れだろう。
相も変わらず、酔客としての己は随分と現金な物だと我ながら思う限りだが、
どうせ観る為らば一重の月よりも湖面に映る双月が良い。特に、今宵の如き
風穏やかな夜は湖面も然程に漣立つ事も無く、さぞ見事な物だろうと思いを馳せるや否や、
徳利を揺らしがてら、ふらふらと湖に向かったのもまた…自然な流れの筈。

だが、其の宵はどうやら先客が居たようだ。
蹲る人影、骨を砕くが如き乾いた音……死肉を喰らう何かにでも出くわしたかと
己が不運を呪ったが、もう数歩歩めば其れが杞憂で在ると識るには易い話であった。

久しく逢う彼は、常と変わらぬ真意の読めぬ穏やかな笑みを浮かべながら俺を招き
共に酒を嗜まんと、偶さか杯を持ち寄った自身の幸運を胸中で悦ぶ俺が居た。
結局の所、酔客とは矢張り現金な物に尽きる――。

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